呼吸器・循環器科

概要・当院の姿勢

当院では獣医循環器病学会に所属している吉田、尾関をはじめ、わんちゃん・ねこちゃんの呼吸器、循環器の疾患に1次病院としてできる最大限の対応を行っております。このページでは、当院の過去のデータから特に発症が多いと思われる以下7つの疾患をピックアップし、その症状の特徴や当院での対応を説明いたします。なお、個々状態に応じて治療法を変更致しますので、ここに記載している対応方法と実際の対応方法が異なる場合もございます。

ピックアップ 7つの疾患リスト

  1. 軟口蓋過長症
  2. 肺炎
  3. 肺水腫
  4. 感染症
  5. 僧僧帽弁粘液腫様変性
  6. 肥大型心筋症
  7. フィラリア症

※疾患名をクリックタップすると各詳細にジャンプします

各疾患詳細

1. 軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)

① 症状
呼吸が荒く、呼吸する時にゼーゼー、ガーガーと言った大きな音がなります。またえずく様子や運動量が減り、体温が上がります。進行すると睡眠時に呼吸が停止したり、いびきが出たり、さらに進行すると失神や虚脱、舌の色が紫色に変化することがあります。
② 発生しやすい種別
短頭種気道症候群の一つで、イングリッシュ・ブルドック、フレンチ・ブルドック、パグ、ボストンテリア、ペキニーズ、ポメラニアン、シーズーなど他の犬種よりマズル(鼻先のこと)が極端に短い品種で多く見られます。犬に多い病気です。
③ 原因
軟口蓋は鼻腔と喉頭を隔てている壁の様なものです。軟口蓋が正常より長く、喉頭蓋に覆いかぶさることで、呼吸がしずらくなり、自然ではない呼吸になることで、ガーガーと音がなったり熱がこもったりします。また、軟口蓋が長いことに付随し、鼻腔が狭い場合、空気の通り道がさらに弊害を受け、呼吸困難や呼吸疲労を起こします。
④ 当院の一般的な対処
軟口蓋の位置や形の異常は単純レントゲン検査でわかる場合もありますが、より詳細な異常は評価が難しいです。このため、自発呼吸を残した状態での麻酔下で行う気管支内視鏡や透視下レントゲン検査、または目視での確認をします。治療は症状が軽度であれば、体重・体温・環境管理および、鎮静剤や消炎剤の併用により一時的に改善することが出来ます。ただし、内科的療法では限界がある場合は、早期の外科的処置が望ましいです。外科処置では過剰な軟口蓋を切除し、喉頭蓋の先端に少し重なる程度にします。処置の後、一時的に喉が腫れることがあるため、手術後には酸素室内で様子を見たり、喉の腫れを軽減されるためにステロイド剤を使用します。また、同時に外鼻腔が狭い場合は、外科的に鼻の穴(鼻腔)を広げる処置(外鼻道拡張術)を行います。

2. 肺炎

① 症状
呼吸が速い、浅い、咳が出る、なにか喉に詰まったようなえずく動作が出る、じっとしている時間が長い、体が熱く感じるという症状があります。原因にもよりますが、ウイルスや細菌など感染症が原因の場合は、鼻汁が出る場合もあります。
② 発生しやすい種別
犬でも猫でもよく見られ、感染症(後述)などの影響もあり、ワクチン未接種の若齢動物に多く見られることもありますが、中高齢の子にも見られます。
③ 原因
原因により、細菌性、誤嚥性(ごえんせい、誤って飲み込んでしまうこと)、ウイルス性、真菌性、原虫性と分かれます。また、基礎疾患を抱えていて続発的に肺炎を起こすこともあります。
④ 当院の一般的な対処
聴診器での肺音の荒さ、単純レントゲン検査で肺野の状態を、血液検査で白血球や炎症のマーカーが上がっていないかを確認し、診断します。また、誤嚥性であった場合は、嘔吐をひきおこさせるような基礎疾患がないか、超音波検査、必要に応じて内視鏡検査を行います。治療は、酸素室内(高酸素濃度)での安静と必要に応じて、抗生物質や気管支を広げるお薬、去痰剤、ステロイド剤などの薬剤を使用します。吸入器を用いた治療(ネブライザー療法)も有用とされています。また、必要に応じて細菌の培養検査、ウイルスの遺伝子検査などを実施する場合があります。

3. 肺水腫

① 症状
咳が出る、呼吸が苦しそう、呼吸が浅く早いという症状が出ます。心臓病が原因の場合、血液の流れが悪く交通渋滞を起こし、最終的に肺に水のようなもの(浮腫液)が貯まります。
② 発生しやすい種別
犬でも猫でもよく見られますが、犬の方が多いです。
③ 原因
肺胞の中に水がたまる病気で、心臓が原因の場合と心臓以外が原因の場合があります。
④ 当院の一般的な対処
単純レントゲン検査で肺野の曇り度合いを確認、また血液検査で感染や炎症のマーカーを確認し他の呼吸器疾患ではないことを確認します。心臓が原因で肺水腫になっている場合、おしっこを排泄させる薬(利尿剤)の使用により状態が改善します。心臓以外が原因の場合、急激な炎症が起こることで肺胞周囲の血管が破綻し、血漿が肺胞内に漏れ出します。この場合、利尿剤はあまり効果がなく、炎症を抑えていくことで組織修復をうながします。利尿剤以外には、酸素室内(高酸素濃度)での安静、心臓病が基礎にある場合は必要な心臓の働きを助けるお薬、気管支を広げるお薬、肺炎を併発している場合は抗生物質を併用します。

4. 感染症(ケンネルコフ、猫伝染性ヘルペスウイルス感染症、マイコプラズマ)

① 症状
症状が軽い場合は、間欠的な咳だけのことがあります。重症化すると鼻汁やくしゃみ、眼脂を伴い発熱や食欲が落ちて来ます。多頭飼育や環境不良の元で飼育されている場合は、症状がより重篤化また死の転機をとる場合もあります。
② 発生しやすい種別
犬でも猫にも見られます。
③ 原因
ウイルスやマイコプラズマ(細菌とウイルスの中間に位置するもの)に感染することで発症します。
④ 当院の一般的な対処
臨床症状、病気にかかっている動物との接触がなかったか、飼育環境などを確認します。また、単純レントゲン検査にて肺の状態、血液検査にて白血球数や炎症のマーカーを指標にします。ただし、症状が軽症の場合上記の検査では特に異常が認められないこともあります。治療は原因に応じた抗生物質、気管支を広げるお薬(気道が収縮するのを予防、気道の線毛の動きを補助)やインターフェロン製剤などで治療します。咳がひどい場合は、鎮咳薬、去痰剤、長期化する場合は吸入器を併用することがあります。

5. 僧帽弁粘液腫様変性(ぞうぼうべんねんえきしゅうようへんせい)

① 症状
運動量が減った、時折咳が出る、ぜーぜーと呼吸が粗いという症状が出ます。症状が重篤化すると、呼吸困難、舌色の紫色化、肺水腫、失神が起こります。
② 発生しやすい種別
マルチーズ、シーズー、キャバリア・コッカー・スパニエル、チワワなどで多く見られますが、ヨークシャテリア、ミニチュア・ダックスフントでも認められます。中高齢の犬で多く見られますが、心臓病を患った猫の末期でも見られます。
③ 原因
犬の心臓の構造は、人と同様で、右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋で出来ています。右心房と右心室は全身から流れてきた酸素濃度の薄い血液を肺に送る働きをしています。左心房と左心室は肺からきれいな血液を受け取り全身に送り出します。この病気は、左心房から左心室へ血液が流れる時に間を隔てている僧帽弁といわれる弁に異常がおこります。弁は左心房から左心室に向かってしか開かないようになっていることで血液が一方通行に流れる仕組みになっています。この弁がもろくなったり、分厚くなることで、弁の動きが悪くなり本来は流れないはずの、左心室から左心房に血液が逆流してしまいます。また、この弁を支える筋肉に異常が起きた場合も、弁に影響が出ることがあります。
④ 当院の一般的な対処
臨床症状、および聴診器での心雑音(血液の逆流音)の有無、血液での心臓マーカー、血圧測定、単純レントゲン検査での心臓サイズの拡大および心臓の超音波検査にて総合的に評価します。状態の程度は、心不全のガイドラインに従って分類され、その分類に合わせて治療方針が変わります。主に、心臓の過剰な働きを軽減したり、血圧を調整するお薬を1種類から数種類組み合わせて治療します。また、若齢で対応が可能な場合は外科的手術(心臓外科専門病院への紹介)を行うこともあります。

6. 肥大型心筋症

① 症状
初期は無症状ですが、進行すると口を開けて呼吸をしたり、動きが悪くなったり、立てなくなったりすることがあります。胸に水がたまったり、不整脈によって突然死を起こすこともあります。
② 発生しやすい種別
猫で多く見られ、特に純血の猫種(メインクーン、アメリカンショートヘア、ペルシャ、ラグドールなど)で多く見られ、年齢は若齢から高齢まで発症します。
③ 原因
5番の項目、僧帽弁粘液腫様変性で記載した左心室内の筋肉が内側に向かって分厚くなることで、心臓の中の容積が狭くなり、心臓が膨らみにくくなります。その結果血液を上手く送り出せない状態になります。それにより体は心拍数や血圧を上げます。この筋肉が分厚くなる原因ははっきりとは知られていませんが、心筋収縮蛋白の異常だとされています。また、心臓内での血液の流れが悪くなることで血栓(血の塊)ができやすくなります。血栓は左心房内で形成され、これが心臓から流れ出て血管に詰まる(主に後肢に分布する血管)ことで、下半身麻痺が生じ、激痛を生じます。(大動脈血栓塞栓症)
④ 当院の一般的な対処
臨床症状(お家での心拍数が早いなど)、および聴診器での心雑音の有無、血液心臓マーカー、安静時の血圧測定単純レントゲン検査、心臓の超音波検査にて総合的に評価します。ただし、猫では心雑音が聴こえることはあまり多くなく、聴こえる場合は重篤化している場合が多いです。僧帽弁粘液腫様変変性と似ていますが、心臓の働きを助けるお薬を使ったり、血圧を下げるお薬を併用したりします。また必要に応じて酸素室内(高酸素濃度)での管理、さらに胸にお水が溜まって呼吸がし辛い場合は、特殊な専用針を用いて除去する場合もあります。

7. 犬糸状虫症(フィラリア症)

① 症状
無症状である場合もありますが、軽症では軽い咳、フィラリア成虫の寄生数が多いと咳が出たり、運動量が減って疲れやすくなり、ひどい場合は吐いたり、お腹に水がたまったり、失神することがあります。
② 発生しやすい種別
犬で見られますが、猫でもかかる場合があります。猫がかかる場合は重篤で突然死する場合があります。
③ 原因
犬糸状虫といわれる線虫の1種(全長0.2ミリほどの細長く白色のもの)が肺の血管や心臓に寄生する病気です。フィラリアにかかった蚊にさされることで感染します。進行すると肝臓や腎臓、その他の血管にも影響を及ぼします。犬の体内に入った感染幼虫が、皮膚や筋肉、脂肪で生活を始め、2ヶ月ほどかけて成長します。その後、血管内に入りさらに成長、脱皮を経て心臓と肺動脈に到達します。雄と雌が揃うことでミクロフィラリアを生み出し、抹消の血管に出てきます。感染してからここまでで約7~8ヶ月かかります。また、成虫の寿命は5~6年と言われています。
④ 当院の一般的な対処
主に成虫抗原を検出する免疫学的検査と、血液中のミクロフィラリアを直接顕微鏡下で探す検査法があります。感染認められた場合は、単純レントゲン検査、超音波検査などで、血管が分厚くなっていないか、成虫の寄生状況、心臓への損傷程度を検査し評価します。数年前は釣り出し法というフィラリア成虫をカテーテル使用にて回収していましたが、リスクを配慮して現在はフィラリア駆虫剤を長期で使用することで少しずつ死滅させていく治療法が一般的です。

文責:獣医師 尾関