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脛骨、腓骨の骨折

概要

脛骨と腓骨は、後肢の足根関節(足首)と膝関節の間にある骨です。脛骨骨折のほとんどは斜骨折や螺旋状骨折が多く、横骨折は比較的少ないです。脛骨と腓骨の骨折は、同時に発生する場合がほとんどです。その荷重のほとんどは脛骨が支えており、腓骨は骨端部(骨の端)で荷重を少し支えている程度です。このため、脛骨と腓骨の骨折の治療は脛骨を治癒させることが目的になります。

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脛骨と腓骨の骨折の治療方法

治療法は主に、外固定、外科療法(手術)があり、骨折の種類、患者の状態、ご家族の意向などを総合的に判断して決定していきます。

外固定

外固定とはいわゆるギプスなどを用いた固定をいいます。人と違って、動物は安静にするのが難しいため、外固定で治療できない場合がほとんどです。また、脛骨骨折は斜骨折や螺旋状骨折が多く、周囲の軟部組織が少ないため、皮膚から骨が突き出してくる開放骨折が、外固定での治療中に起きてくる可能性もあります。以下の場合は外固定で治療を行うことがあります。基本的には外科療法を推奨いたします。

  • 患者の状態が悪く、麻酔をかけることができない。
  • 脛骨は骨折しているが、腓骨は骨折しておらず、脛骨の骨折に変位や角形成が認められない。
  • ご家族の意向で、手術に同意されない。

外科療法

骨折の治療に用いられている手術方法は様々あり、骨折の種類によって使い分けています。脛骨と腓骨の骨折で用いられる手術方法は、プレート固定、創外固定、インターロッキングネイル、髄内ピン、サークラージワイヤーなどがあります。当院では、主にプレート固定、創外固定で手術を行っています。どの手術方法で行っても、10%くらいの確率で様々な合併症(手術における不都合な出来事)が起こると報告されています。合併症には、プレートやスクリュー、ピンなどのインプラントの破損やルースニング、変形癒合、癒合遅延、癒合不全、細菌感染、成長板の障害、神経麻痺などがあります。また、手術時には剃毛を行うため、術後に毛の色が変わったり、薄くなったり、毛が生えてこなかったりすることがあります。プレート固定、創外固定どちらの手術方法であっても、骨が癒合する(骨がくっつく)期間は、通常1-3 ヶ月です。骨がある程度癒合したら、スクリューやピンを抜去していきます。

合併症

インプラントの破損やルースニング

スクリューやプレートが折れたり、抜けてきたりすることがあります。

変形癒合

骨が正常でない形に癒合して(くっついて)しまっている状態。変形がひどい場合は、絶えず足を引きずって歩くようになることがあります。

癒合遅延

骨は通常1-3 ヶ月で癒合します。骨が癒合するのにそれ以上の時間がかかっている場合のことをいいます。

癒合不全

骨がまったく癒合してきていない状態のことです。癒合不全になると再手術が必要になります。最悪の場合は、断脚(足を切断すること)が必要になることもあります。

細菌感染

細菌感染が起こると骨の癒合が遅れたり、スクリューが緩んできたりすることがあります。最悪の場合、骨融解(骨密度が低下)が起こることがあります。

成長板の障害

成長板とは1歳未満の成長期の動物に見られる骨が成長する場所のことです。骨の端に存在し、骨折したときや手術中に損傷することがあります。損傷した成長板は成長することが出来なくなり、骨が変形して成長する場合があります。

神経麻痺

ほとんどの場合、骨折時に神経の損傷が起こることによって生じます。スクリューが神経に当たることでも起こることがあります。

プレート固定

皮膚を切って、筋肉の下にプレートを入れ、スクリューで骨とプレートを固定する手術方法です。
成長期(1 歳未満)の症例では骨の成長を阻害する可能性があるため、骨の癒合が認められたら、スクリューとプレートは抜去する方がいいと言われています。また、1 歳以上であってもプレートを置いておくことで骨密度が低下することがあるため、スクリューを数本抜去するほうがいいと思われます。スクリューやプレートの抜去に関しては、ご家族と相談の上、決定させていただきます。

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メリット
  • 筋肉の下にプレートがあるため、術後に傷が治癒してからはエリザベスカラーなど必要がなく、今まで通りの生活を送ることができる。
  • 通院の回数を減らすことができる。
  • プレートは抜去せずに置いておくこともできる。
デメリット
  • 骨が細くなったり、骨密度が低下したりすることがある。
  • スクリューやプレートを抜去する際には、皮膚を切開しないといけない。
  • プレート抜去後に再骨折の可能性がある。
  • 細菌感染に弱い。

創外固定

スレッドピン(ネジ山がある針金)を骨に入れ、皮膚の外でピンを固定し、骨がズレないようにする手術方法です。

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メリット
  • 皮膚からピンが出ているので、ピンを抜去する際に、皮膚を切開する必要がない。
  • プレート固定に比べ、骨が細くなったり骨密度が低下したりすることが少ない。
  • 細菌感染に比較的強い。
デメリット
  • 骨が治癒するまでの間、エリザベスカラーをつけて生活しないといけない。
  • 皮膚から固定器具が露出しているため、ぶつけるたりすることで曲がってしまう可能性がある。
  • 長期間の固定には向かない。
  • 骨が癒合したら、ピンや固定具は抜去する必要がある。必ず麻酔が必要。
  • 創外固定の抜去後に再骨折の可能性がある。

術後管理

骨が癒合するまでは、基本的にはケージで安静にして下さい。ゆっくり歩くことは大丈夫ですが、走る、ジャンプ、飛び降りる、飛び乗る、階段を上り下りなどは控えて下さい。術後はレントゲンを撮影し、経過をみていきます。通常は、術後2 週、4 週、8 週、12週くらいの間隔で検査を行います。術後に合併症がおこると、絶えず患肢を挙上(地面に足をつけなくなる)するようになります。起立時に少しだけ挙上することは問題ないことがほとんどです。気になることがありましたら、すぐに当院までご連絡下さい。

レントゲン写真や検査データ、動画などを学会発表や本の執筆、ホームページなどに使用する場合があります。予めご了承ください。