歯科・消化器科

概要・当院の姿勢

当院では、消化器疾患や、口腔内疾患など比較的外来数の上位に位置づけられる症例における診断・治療について、学会・セミナー等での知見など新しい情報を随時取り入れています。このページでは当院の過去診察データから特に発症が多いと思われる以下7つの疾患をピックアップし、その症状の特徴や当院での対応を説明致します。

ピックアップ 7つの疾患リスト

歯科

  1. 犬の歯周病
  2. 猫の口内炎
  3. 乳歯遺残

消化器科

  1. 腸閉塞
  2. IBD
  3. 便秘症
  4. 肛門囊炎

※胃腸炎・膵炎については内科項目をご参照ください
※疾患名をクリックタップすると各詳細にジャンプします

各疾患詳細

歯科

1. 歯周病

① 症状
犬の歯周病は、口臭が気になり、歯石が増えてきたタイミングで初めて気づく場合が多いです。歯周病は、歯根膿瘍(歯の根元に膿が溜まると、目の下や顎のところが腫れて、破裂すると血膿がでることがあります)の原因となり、顎の骨が脆くなり、骨折することもあります。また、歯周病菌が血液に乗って全身にめぐると発熱し、心不全や腎不全の原因となり、命の危険もあります。
② 発生しやすい年齢
徐々に歯石や口臭が増えてくる2、3歳から緩やかに罹患率が増えます。
③ 原因
原因は歯垢や歯石に潜む歯周病菌です。歯垢は、歯や歯周ポケットに溜まるヌメヌメしたもので、歯ブラシで落とせますが、放っておくと3-5日ほどで歯石になり、歯ブラシでは落とせなくなります。
④ 当院の一般的な対処
歯周病菌で、顔が腫れ、熱がでる場合は抗生剤を用います。ただし、それだけでは歯周病菌の住処である歯垢や歯石は取れないため、歯科処置として、スケーラーという器具を使用し、歯面に沈着した歯垢や歯石などを除去し、歯の表面も研磨することで、歯をピカピカでツルツルの状態にできます。これにより、歯周病菌の寝床である歯垢や歯石が取れ、歯の表面に新たな歯垢、歯石がつきにくい状態にします。顎骨の一部が溶け始めている歯は抜歯が必要な場合もあるため、事前にレントゲン検査にて確認をします。また、歯周病対策としては予防が最も重要になり、理想は毎日歯磨きや歯磨きガムなどの対処をしていただくことですが、毎日は難しくても週に2〜3日出来れば、歯石のつくスピードを遅らせることができます。

2. 口内炎

① 症状
猫の口内炎は、歯茎など口の中で炎症が起こることで、赤く腫れ、きつい口臭の原因となります。痛みがあるため、ご飯を食べたいのに、口を気にし、ぺチャぺチャと音を立てることもあります。
② 発生しやすい種別
若齢でも口の中をよくみると、口内炎が見つかることがよくあります。また、保護された子猫や普段から外にもお出かけする猫ちゃんにも多く見られます。
③ 原因
歯周病菌やカリシウイルス、ヘルペスウイルスが悪化の原因と言われています。猫エイズウイルス、猫白血病ウイルスなどに感染している場合は、免疫力が低下している可能性があるため、難治性になり、治療への反応が悪い場合があります。
④ 当院の一般的な対処
抗生剤や痛み止めの薬を投薬します。疼痛緩和のためにレーザーを照射することもあります。内科治療に反応しない場合は、外科的に臼歯(きゅうし、奥のほうの歯)を全て抜歯することがあります。全臼歯抜歯により、60%ほどが完治し、20%は著しい改善を認め、わずかに改善が得られたものを含めると有効率は93%ほどであったとの獣医学研究データがあります。歯を抜くとご飯が食べられないのでは?と心配されるかもしれませんがが、痛みがなくなると同時に食欲が復活してくれるとドライフードでもよく食べてくれます。

3. 乳歯遺残(にゅうしいざん)

① 症状
通常、生後半年前後で乳歯は永久歯に生え変わります。犬歯や切歯は構造的に遺残しやすく、永久歯の横に乳歯が残ると、歯並びが悪くなり、歯と歯の隙間に歯垢や歯石が溜まりやすくなります。
② 発生しやすい種別
大人になってから乳歯が抜けることは少ないため、この時点で残っている場合は乳歯遺残と呼ばれます。
③ 原因
永久歯が生える際、乳歯の歯根部分が吸収されるのとともに、根元部分を押し出します。この際に、上手に抜けないと、乳歯遺残となります。
④ 当院の一般的な対処
乳歯遺残は歯周病の原因となるため、出来れば若いうちに抜歯することをお勧めします。去勢や避妊手術の際に一緒に遺残した乳歯を抜くことが多いです。

消化器科

4. 腸閉塞

① 症状
急に何度も繰り返し吐き続けたり、下痢を起こしたりします。また急に元気食欲がなくなることがほとんどです。
② 発生しやすい種別
わんちゃん・ねこちゃん、どんな子でも起こりえます。おもちゃで遊んで口に咥えるなど、拾い食いのクセが普段からある子は特に注意が必要です。若い頃は何でも口に入れてしまうことが多いため、より注意が必要です。
③ 原因
異物が消化管内を通過できずに詰まってしまうことで起こります。異物には様々なものが含まれ、当院に来られた例をあげるだけでも、おもちゃの一部、小さなボール、串、爪楊枝、まち針、骨付きのフライドチキン、梅の種、乾燥剤、バスタオルの一部、ペットシーツの一部、ビニール袋、紐など様々なものがあげられます。こんなものまで食べるの?と思うかもしれませんが、列挙した以外にも口に入れてしまうことがあるため、普段から床以外にも手や口が届く範囲はきれいに片付けましょう。
④ 当院の一般的な対処
食べてすぐであれば、吐かせる処置や内視鏡で確認して取り出す処置を行うことがあります。時間が経過して、異物が十二指腸や空腸、回腸など内視鏡の届かない場所に流れてしまった場合はお腹を開けて摘出しなければならないこともあるため、早め早めに診察に来ていただけるとわんちゃん・ねこちゃんの身体への負担を減らすことができます。ただし、1度異物を除去しても誤食を繰り返す場合があるので、誤って飲み込むことができないような生活環境を飼い主様が整えることが重要です。

5. 炎症性腸疾患(IBD=Inframmatory Bowel Disease)

① 症状
原因不明の慢性的な下痢の中では炎症性腸疾患が最も多いと言われています。主な症状は長く続く(概ね2週間以上)下痢のほかに、吐き気、食欲不振、体重減少などがあります。
② 発生しやすい種別
ボストンテリア、フレンチ・ブルドッグ、トイプードルなど
③ 原因
明らかな病因は特定されていませんが、遺伝的な素因に加え食物環境、細菌、腸管腔や粘膜の透過性、免疫システムの異常などが考えられています。
④ 当院の一般的な対処
低脂質や消化性の高い療法食に変更して、食餌が腸炎に関与しているかを確認します。また、抗菌剤を使用して腸内の悪玉菌を退治し、症状が改善されるかを見ていきます。食餌療法や抗菌剤投与で症状がおさまらない場合、超音波検査や内視鏡生検を実施します。内視鏡を用いると腸の内側にある粘膜面が観察でき、身体の負担を最小限にして腸の組織を採取することができます。粘膜より下の組織(固有層や筋層など)に異常がある可能性が高い場合は、試験開腹して腸の一部を採取する、全層生検が選択されます。臨床症状や超音波検査や病理検査などを総合に判断し、IBDと診断された場合は、飼い主様と相談の上、ステロイドや免疫抑制剤などが用いられることが多いです。

6. 便秘症

① 症状
何日も排便しない、排便するが量が少ない、残便感が続く状態のことです。便秘が慢性化して常習化している場合、食欲が落ち、いきんだりした際に吐き気が出ることもあります。
② 発生しやすい種別
どんな子でも見られますが、特に猫は巨大結腸症や慢性腎臓病からの便秘症を良く発症します。
③ 原因
巨大結腸症は食事に含まれる繊維量不足、慢性腎臓病など多飲多尿が続くと体の水分が不足し、うんちが固くなってしまうことがあります。また、腫瘍、会陰ヘルニアや骨盤骨折により、便が腸を通りづらくなることでもおこります。
④ 当院の一般的な対処
可溶性繊維を豊富に含んだ食事への変更や、下剤を用いることで便が腸を通りやすくします。また脱水がある場合は数日点滴を行うことで改善することが多いです。 腫瘍、会陰ヘルニアや骨盤骨折など構造上の問題から便秘になっている場合は、それに対する治療を行う必要があります。

7. 肛門囊炎・肛門嚢破裂

① 症状
お尻を地面でしきりに擦り付け、しっぽを気にする仕草が頻繁に見られます。
② 発生しやすい種別
犬では、小型犬の方が大型犬よりも肛門嚢括約筋の力が弱く、肛門嚢が溜まりやすいため、年齢とともに自力では肛門嚢が出せないこともしばしばあります。また、猫でも肛門嚢が溜まることがあるため、時に確認が必要です。
③ 原因
分泌液が上手に出せないと、肛門嚢の中にある分泌液に細菌が増え、炎症が起こります。肛門嚢炎は、徐々に膿が溜まってくると、肛門嚢の横がプクッと膨らみ、破裂することがあります。
④ 当院の一般的な対処
予防には、定期的に肛門嚢絞りをする事で予防することが大事です。肛門嚢炎は破裂した場合は、抗生剤の投薬や局所の洗浄をします。肛門嚢炎を繰り返す場合や、内科治療で治らない場合は、肛門嚢を摘出することもあります。肛門嚢を切除した場合は、基本的に肛門嚢がたまらなくなるので、肛門嚢炎などが起きる可能性はありません。

文責:獣医師 吉田