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【獣医師が解説】全身麻酔って、怖いもの?

2022.06.03

症例紹介

飼い主様がもっとも心配されるものの一つに「全身麻酔」があると思います。

動物と生活していると、去勢や避妊手術の他、「病気で手術が必要になった」「歯が汚れてきて手術をすすめられた」「CTやMRIなど精密検査で…」など、さまざまな理由で「全身麻酔」が必要になることがあります。

今回は、愛するわが子たちと暮らす飼い主様にとって、心配のタネの一つだと思われる「全身麻酔」について、お話しさせていただきます。

 

そもそも、全身麻酔って?

全身麻酔とは、簡単にいうと「手術中の痛みや恐怖を減らす・なくすために、さまざまなお薬を使って、眠っているような状態を作り出すこと」です。

言い換えると「痛みや怖さが伴うような手術には、全身麻酔が必要になる」ということです。

麻酔には、他に「局所麻酔」「硬膜外麻酔」など、体の一部にだけ麻酔をかける方法があり、全身麻酔と併用することもあります。

 

なぜ、人に比べていろんな時に必要になるの?

動物に「なぜ手術するのか?」を理解してもらうことは、基本的にはできません。

「動かないでね」とお願いすることも困難ですし、仮にじっと手術に耐えてくれたとしても、トラウマになってしまったり、病院嫌いになってしまう可能性が高いです。

そのため、歯の手術や小さなイボとりなど、人間だったら全身麻酔をかけなくてもできる処置でも、全身麻酔で「痛みや恐怖を感じないように」してあげる必要があるのです。

 

全身麻酔は危険?

お薬で、「普通に起きている子」を「眠っている状態」に変えるため、どうしても全身麻酔中には、呼吸や血圧などの体の働きが抑えられます。

そういった全身麻酔の負の影響により、残念ながら、現在の医療では、人・動物ともに「100%安全な麻酔方法」というものはありません。

そのため、動物病院京都では、麻酔の安全性を限りなく100%に近づけるべく、全ての手術に麻酔専門のスタッフを配置し、動物の状態を五感と最新の検査器械で監視しています。

また、全身麻酔の前には「安全に麻酔をかけることができるか」を判断するために、各種検査を実施させて頂いています。

 

実際は、どんなふうにするの?

全身麻酔は、以下の手順で実施します

【全身麻酔手順】

おうちで、ごはん・お水を抜いて、お腹が空っぽで来院してもらう

→麻酔のリスクになるような体の異常がないか、各種検査実施

お預かりし、点滴などをして麻酔に備える。麻酔前の状態を観察する

まず、動物の不安を軽減するお薬を投与

全身麻酔導入、気管チューブ挿管(酸素とガス麻酔薬を送ったり、呼吸を補助するための管を気管に挿れる)

【手術開始】 →麻酔担当スタッフが五感や機械を使って、動物を観察

【手術終了】 →麻酔ストップ、気管チューブ抜去

→病院内でしばらく麻酔後の状態を観察

→【退院】

 

安全に全身麻酔を行うには?

安全に全身麻酔を実施するために、先述のように「全身麻酔のリスクになるような体の異常がないか」を事前に検査で確認します。

検査項目は、動物の種類、年齢によって変わります。

とくに、高齢の動物では麻酔のリスクも上がるため、検査の項目を増やして、麻酔のリスクを慎重に判断します。

また、いろいろな作用を持つお薬を組み合わせることで、各お薬の副反応を軽減できるため、動物病院京都では、一度の全身麻酔で最大10種類前後のお薬を併用しています。

 

どんなお薬を使うの?

– 動物さんの不安を取り除く

– 眠らせる

– 筋肉の緊張をとる

– 痛みをとる

– 血圧を維持する(心拍数をあげるetc)

さまざまな作用のあるお薬を用います。

その他に、抗生物質なども用います。

 

飼い主様が気をつけることは?

もっとも気をつけていただくことは、「ごはんを抜いてお腹を空っぽにしてきていただく」ことです。

これは、全身麻酔をかけるときに吐いてしまう動物さんがいるためです。

吐いたものを肺に誤嚥してしまうと、非常に危険なため、必ずお腹を空っぽにしてきていただく必要があります。

また、手術前数日の間に体調を崩した場合には、一度病院にご連絡していただき、予定通り手術を行うか、ご相談いただくと良いでしょう。

 

全身麻酔を受けた後に、おうちでしてあげたいこと

手術や入院を経験した後の動物さんは、とても不安になっていることがあります。

これは、痛みなど手術自体の影響というよりも、「家族と離れて不安だった」「何をされたか理解することができない。でも、何かされたのはわかる」といったことからきている可能性が高いと考えられます。

ですので、手術から帰ってきた動物には、「もう安心だよ、ゆっくりしていていいよ」と声をかけて、優しく接してあげてください。

また、手術当日に退院してきた場合には、麻酔の影響がまだ体に残っていて、帰宅後すぐに眠ってしまうこともあります。その際には、そっとしておいてあげてください。

 

まとめ

今回は、全身麻酔についてお話しさせていただきました。

全身麻酔は、100%安全とは言えないため、しっかりした準備や心構えが必要ですが、現在では麻酔薬や器械の進歩もあって、安全性は格段に上昇しています。

また、獣医師が全身麻酔を推奨するのは、「全身麻酔をかけてでも実施する必要がある検査・治療がある場合」です。そういった際に、適切な判断ができるよう、普段から、かかりつけの先生としっかりと信頼関係を築いていただくことも大切です。

不安なことやわからないことは、いつでも動物病院京都スタッフにご質問いただければと思います。


動物病院 京都について

動物病院 京都は京都市北区にある動物病院です。

一般的な町の動物病院としての役割のほかに、ねこ専門の病院があったり、骨折や脱臼などの整形外科手術の実績が豊富なことや、皮膚科の専門医診療など、より高度な獣医療も提供しています。

京都市西京区にも分院の動物病院京都 西京桂院があり、京都市内を中心に、飼い主様に寄り添った獣医療を提供しています。

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