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【猫に多い病気】心臓病・肥大型心筋症について

2022.04.22

症例紹介

動物病院京都 獣医師の酒井宥太です。

今日は猫の「肥大型心筋症」について分かりやすく解説していこうと思います。

心臓病・肥大型心筋症とは

「心筋症」とは心臓の筋肉に異常を起こすことで生じる病気のことです。

猫の心筋症はいくつかのタイプに分類されますが、そのなかでも心臓の壁が分厚くなるタイプの心筋症を「肥大型心筋症」といい、猫の心臓病で最も多く見られる病気です。

心臓は心筋が拡張と収縮を繰り返して全身に血液を送る役割を果たしています。

肥大型心筋症になると心筋が肥厚してしまうため、心臓内腔が狭くなると同時に、心筋の柔軟性が落ちて動きが鈍くなります。

その結果、うまく全身に十分な血液を送れなくなってしまいます。

肥大型心筋症の有病率は、健康な猫で15%前後と報告されています。

また発症する年齢も、1歳未満の幼少期から高齢期の猫まで幅広いことも特徴です。

病気になる原因

肥大型心筋症の猫では遺伝子に変異があることが確認されているため遺伝的な要因が関与していると考えられています。

好発猫種として、メインクーン、ラグドール、ノルウェージャンフォレストキャット、アメリカンショートヘア、ブリティッシュショートヘアなどが知られていますが、どの品種でも発症する可能性はあります。

またその他にも、高血圧症や甲状腺機能亢進症といった病気にも続発することがあります。

どんな症状なのか

肥大型心筋症のほとんどは無症状であり、症状が出てくる場合は病気が進行しており緊急の処置が必要になる場合があるため注意が必要です。

症状にはいくつかあり、肥大型心筋症以外でも見られる症状なので、しっかりと診察、検査した上での診断が必要です。

・ぐたっとして、食欲がない

・遊んでいてもすぐに疲れる

・口を開けて呼吸する

・急に叫んで、後ろ足が動かなくなった

以上の症状がある場合は1度病院で詳しい検査をすることをおすすめします。

特に開口呼吸や後肢の麻痺などは緊急の状態の可能性も考えられます。

 

肺水腫・胸水

心臓のポンプ機能が低下することで、全身に血液を送ることができなくなり、胸腔や肺に水が溜まってしまう病態です。

開口呼吸やチアノーゼなどの症状が見られ緊急の処置が必要な状態です。

血栓症

心機能の低下で全身に血液が送れなくなると、心臓内に血液が溜まっていきます。

血液は流れが悪くなると固まってしまうため、心臓内で塊(血栓)を作ります。

血栓が形成されると、血流にのり全身の様々なところに運ばれて細い血管に詰まってしまいます。

猫の肥大型心筋症では後肢の血流を阻害することが多く、後肢痛や酷い場合は後肢麻痺を起こします。

その他にも、腎臓の血管に詰まることで腎不全を起こしたり、脳の血管に詰まることで脳梗塞を起こす恐れもあります。

検査について

肥大型心筋症はほとんどが無症状です。

早期にこの病気を診断するには、以下の詳しい検査が必要になります。

①胸部レントゲン検査

心臓の拡大・胸水・肺水腫の確認

②心臓超音波検査

心筋の肥厚・左心房の拡張・血流の逆流の有無・血栓の有無を確認

③血液検査

脱水・腎不全・電解質異常の確認

内分泌の異常(甲状腺機能亢進症など)有無を確認

うっ血状態の確認

④血圧検査

高血圧の確認

治療について

肥大型心筋症を診断された場合、残念ながら根治の方法はありません。

肥大型心筋症の治療は血管を拡張させたり、心臓の収縮力を強めたりするお薬を飲ませることで血行動態を改善させます。

胸水や肺水腫、血栓症といった命に関わる状態に陥りづらくすることで、猫の生活の質を維持することを目標にしています。

そのため多くは生涯に渡り、猫にお薬を飲んでもらう必要があります。

病気の進行によって、お薬の量や種類を調整しなければいけないため、定期的な心臓の検査が必要になります。

まとめ

猫では肥大型心筋症の有病率が高く、さらに若い猫でも発症する可能性がある怖い病気です。

また初期にはほとんど症状が見られないので、「元気に過ごしているからうちの子は大丈夫!」ということでもありません。

この病気を見つけるためには、普段からよく観察しておくのも大事ですが、やはり心臓エコーを含めた定期的な検査が有用です。

特にまだ心臓の検査を受けたことのない若い猫も避妊、去勢手術前などの早い時期での心臓の検査をおすすめします。


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